健康ってすばらしい

子宮体がんサバイバーの随筆

恐怖のどぎゅーん

さて、脊髄麻酔のおかげで

痛みの心配は全くなく、

いろんなチューブに巻き付かれて

ただただ横になっていた。

 

手術中にぐっすり寝たおかげで

病室に戻った時には頭はすっきり冴え渡っていたのだが、

ドラマのように

意識が朦朧としている感じにしてみた方がいいのだろうかと、

しばらく目をつむって旦那と母の会話に耳を傾けたりしていた。

 

が、すぐに退屈になり、

「ねー。」

と声をかけたら

「あんた、もうしゃべれるの?!」

と母にものすごく驚かれた。

してやったり。

 

そんなのんきな私を一番恐れさせたのは

恐怖のどぎゅーんであった。

 

それは主治医の先生と共にやってくる。

「主治医の先生」と言うのは面倒くさいので、

今後は淡々告知の淡々先生と呼ぶことにしよう。

 

淡々先生がまた、術後の経過を見るためにやってきた。

触診のために私の下っ腹を触った瞬間、

どぎゅーん!

きたっ!これが嫌なのだ!

ものすごい勢いで

自分の意志とは関係なく腹筋が収縮し

思わず上半身が跳ね上がりそうになる。

 

それを見て淡々先生は

「はい、少し我慢してくださいね〜。」

と冷静に静止する。

 

いやいやいやいや!

これはもはや反射運動なので

自分の意思では止められない。

 

自分の勝手な推測だが、

おそらく手術で断裂した筋肉が、

縫合されたとはいえまだ神経はしっかりと繋がっておらず、

触診で触られると反射で収縮するのではないかと思う。

あくまでも勝手な推測である。

 

これは、タコやイカが生きたままさばかれ、

その足を刺し身で食べようとした時に

ぎゅっと足が縮んだりするのと同じ現象だろうか。

 

いや、違うか。

 

何が怖いって、

痛みは感じないので、痛みの恐怖ではない。

 

ものすごい勢いでどぎゅーん!とくるので、

その瞬間に縫合したところがずば!!っと裂けて、

何かがどゔぁぁぁぁ!!!っと出てくるのではいかと、

そういうホラー的な恐怖である。

 

絶対少しはぶちぶちっといった思う。

(個人の感想です。実際はいってません。)

 

そんな苦労も知らず淡々先生が静止するので、

なんとか動かないようにと

どぎゅーん!

きたっ!

ぐわし!

っとベッドの柵を掴み、動かないように耐え忍ぶ。

 

この、

どぎゅーん!ぐわし!

というやり取りを丸一日くらいは繰り返しただろうか。

 

気づいたら触られても平気になっていて、

自分の意思で容易に動けるようになった。

 

寝返りをうつという些細な動作でも、

そこにはたくさんの筋肉と神経の働きがあるのだと

実感した。

 

お腹を縫われた人は、全員この

どぎゅーんを経験するんだろうか。

 

みなさんもぜひ一度お試しあれ。