健康ってすばらしい

子宮体がんサバイバーの随筆

先輩風VSリアル先輩

通常10日くらいと言われている入院だが、

私は27日間入院していた。

退院間近の高熱騒動があったからだ。

 

手術後、大部屋に移ってから3週間ほどは滞在したので、

少なくとも2ターンは

大部屋の住人がそっくり入れ替わった計算だ。

 

見送っては迎え入れ、

見送っては迎え入れ、

そんなことを繰り返していると

段々と先輩風をふかせるようになる私。

 

自分だって入院当初はびくびくしていたのに、

新しく入ってきた人がびくびくしていると、

「大丈夫ですよ〜。」

なんて言ったぐらいにして。

 

私もいよいよ退院が見え始めた頃、

私と同じ子宮体がんで

大部屋に来た人がいた。

 

私は当時アラフォーだったが、

おそらくその方はアラフィフ。

年上だが、とりあえず「後輩さん」と呼ぶことにしよう。

 

後輩さんは元々大人しい方なのか、

緊張している様子で

あまり会話にも入ってこなかった。

 

そんな様子を見て

先輩風マスターの私は、

緊張をほぐそうとちょいちょい話しかけた。

 

少しずつ打ち解けてくれ、

笑顔も見せるようになってくれた。

 

が、打ち解けたのも束の間、

結局は後輩さんの退院も見送った。

 

その数日後、

私も退院の日を迎えた。

師走の27日。

もうすぐ新年。

 

気持ちを新たに、新しい年を迎えましょ〜\(^o^)/

 

なんて思えるか〜〜〜!!!

新年早々

抗がん剤の第一回目の治療が待っていた。

 

はぁやだやだ。

 

心のなかでブツブツ言いつつ、

髪の毛が抜けると言われていたし、

予期せぬ長期入院のせいでぼっさぼさになっていたので、

よたよたしながら美容室に行った。

いつも通りのショートカット。

 

そしてついに来ました、

第一回目の抗がん剤治療。

 

退院の日が近かったので、

もしかして後輩さんもいるかもしれないと

病棟をちらっと探してみたら

名札を見つけた。

 

「こんにちは〜。」

ベッドに近づき挨拶する。

「あ、どうも〜。」

挨拶してくれた後輩さんを見て驚いた。

ベリーショート!

ベリーショートなんてもんじゃない。

ほぼ丸刈り

 

「髪の毛切ったんですね。」

「ええ、抜けるって言うし

 掃除も面倒くさいので。あははは。」

 

負けた...

完全に負けた。

かっこよすぎる。

完全に現実と向き合っている。

 

あんなにびくびくしていたのに、

抗がん剤で髪が抜け落ちるという現実を

まっすぐ見据えてほぼ丸刈りに。

 

私はというと、

「抜けるといっても全部じゃないかもだし。」

と、まだ現実逃避していた。

 

結局の所、

入院日数が長いだけの先輩風は、

人生の年月が長いリアルな先輩に

全く歯がたたないのであった。

 

いや、ホントにあの時の笑顔は

しびれました。