健康ってすばらしい

子宮体がんサバイバーの随筆

睡眠リハビリ

入院中は就寝前に睡眠薬をもらえる。

就寝時間が決められていて

テレビも見れないのに

寝られないのは地獄だ。

 

元々不眠症で寝付きが悪い。

さらに入院中は昼間やることがないので

いつの間にか昼寝をしている。

 

夜は寝付きが悪いくせに

昼寝の時はなぜあんなにも

すんなり気持ちよく寝られるのだろうか。

理不尽だ。

 

まぁそんな訳で

昼間たいして動くこともなく、

寝てばかりいるので

夜寝られるはずもなく、

辛い時を過ごしていたが

ある日看護師さんが睡眠薬を提案してくれた。

 

少しばかり抵抗があったが、

毎晩毎晩寝られないまま時を過ごすのも限界だった。

 

そしてついに飲んだ。

 

なんということだろうか。

眠くもないのに寝ていた!

あれほど寝るのに苦労していた私が!

眠さを感じることもなく、

気づいたら目が覚めて、

目が覚めたということは

寝ていたのかと驚いた。

 

徐々に眠気を感じて寝るのではない。

本当に寝れるかなぁと疑いながらも

目を閉じると寝ている、無意識に。

ストンと。

 

個人差もあるのかもしれないが、

普段の不眠症が嘘のように寝られて

非常に快適だった。

 

まさしく睡眠のための薬だ。

それからというもの、

入院の時は必ず睡眠薬をもらった。

睡眠薬様々だった。

 

だが、

この時には

睡眠薬の恐ろしさをわかっていなかったのだ。

 

退院初日の夜。

久しぶりの我が家。

久しぶりの睡眠薬なしの夜。

 

病院の就寝時間も大幅に過ぎ、

久しぶりの夜ふかし。

 

だが、待てども待てども眠気が来ない。

全く。

あくびも出ない。

完全なる昼間のような目の冴えっぷり。

 

結局夜中の3時頃

テレビをつけながらいつの間にか寝ていた。

 

次の日の昼間は大変だった。

変な時間に寝てしまって、

また夜に眠れないと困るので

昼寝をしないように頑張った。

 

そして夜。

再び眠気が来ない夜が来た。

 

私は思った。

睡眠薬のせいではないか、と。

 

睡眠薬による入眠はやはり不自然だ。

眠くないのにストンと寝ている。

いきなり。

強制的に。

そりゃそうだ。そのための薬なのだから。

 

なんだか恐ろしくなった。

人が自然に感じる眠気を感じなくなってしまった。

睡眠薬に慣れすぎてしまったのだ。

 

脱・睡眠薬

 

その日も限界まで眠れなかった。

 

次の日、眠気を感じた!

だが、眠気を感じ目を閉じ、

一瞬寝れるものの10分ほどで目を覚ます。

眠気を感じ目を閉じる→30分ほどして眠る→

10分ほどで目が覚める→30分テレビ→眠気を感じ目を閉じる→...

この繰り返し。

 

次の日、前の晩よりも早い時間に眠気を感じる。

そして30分まで続けて眠れるようになった。

少しずつではあるが、

以前のように自然に眠気を感じられるようになった。

 

こうして睡眠リハビリを繰り返し、

ようやく通常の睡眠サイクルを取り戻した。

 

やはり夜に全く眠気を感じないのは

人として空恐ろしかった。

 

眠気を取り戻すために

悪戦苦闘している妻の隣で、

一瞬でいびきをかき始める旦那の

鼻をつまみたくなる衝動を抑えるのに苦労したものだ。