健康ってすばらしい

子宮体がんサバイバーの随筆

炭酸血液

足の先から頭のてっぺんまで。

 

シュワワワワワ〜〜〜

 

という音が聞こえるくらいに勢いよく

血液が一気に流れていくのを感じた。

人生で初めてのことだった。

 

怒りで頭に血が上ったことはある。

それはあくまでも頭だけの話だ。

 

あんなに全身を一気に血が駆け巡ることは

きっともうないかもしれない。

しかも炭酸のように。

 

あれは手術後初めての湯船につかったときだ。

 

約一ヶ月ぶりだ。

なかなかドレーンが抜けなかったり、

退院間近になって高熱が出てしばらく熱と格闘していたり、

もともとの怖がりの性格から湯船への恐怖が抜けなかったりで、

約一ヶ月、ずっとシャワーだった。

 

退院してひとまず実家にお世話になった。

田舎にある自宅よりも、

実家のほうが病院に近く、

抗がん剤の治療でまた入院する時にも便利だったからだ。

 

実家のお風呂はかれこれ築30年以上経っており、

今どきの半身浴が出来るような、

足が伸ばせるような浴槽ではない。

 

横に長くないので、

その分深さがある。

 

転ばないように恐る恐るつま先から湯船に入っていく。

 

ここで転んで傷口が開こうものなら...

ひぇぇぇ!!!

考えただけでも恐ろしい!!!

小心者の私は、日々このような恐怖に苛まれていた。

 

少しずつ少しずつ足を入れ、

両足をついてゆ〜〜〜っくりと体を沈める。

 

体が沈むのに逆行するように、

炭酸血液が一気に上へと駆け巡る。

 

シュワワワワワ〜〜〜

ひぇぇぇぇ!!!なんだこりゃ〜!!!

 

「炭酸血液」などというものは存在しない。

医学的にそんなものはない。

実はある???

いや、あったら怖い。

 

しかし確かに感じたのだ。

弾ける血を。

頭の先で弾けて消えていった泡。

 

しばらく放心状態。

 

手術前からそんなに湯船に入る方ではなかった。

朝シャワーで済ませることがほとんどで、

たまに週末日帰り温泉を楽しむ程度。

 

しかしたまの日帰り温泉でも

炭酸泡を感じたことはない。

 

人は一ヶ月湯船に入らないと

そんなにも血流が悪くなるのだろうか。

 

炭酸血液の経験をしてから、

よく健康雑誌などで使われる、

「血流がアップする」

という言葉を実感し、

朝シャワーの習慣を改めた。

 

本当に「血流」というものは存在し、

確かに湯船に浸かることは

「血流をアップさせる」には有効なのだ。

 

あの全身を巡った爽快感を再び感じるために

一ヶ月朝シャワー生活に戻ろうとは思わないが、

お手軽に味わえるならもう一度だけ味わってみたい。

そしてみなさんにも味わってほしい。

 

余談だが、

私がお風呂を上がった後、

風呂掃除をしてくれた母の一言。

 

「風呂場が病院の臭いがしたわ〜。」

 

お風呂のデトックス効果も実感した一日でした。