健康ってすばらしい

子宮体がんサバイバーの随筆

後の祭りだが、それもまたよし

私が子宮体がんの手術をした年は、

家を新築で建てた翌年だった。

 

よく、

車や家など

大きい買い物をした後は

病気やケガに注意しないといけないというが、

まさにその通り。

 

ごりごりの住宅ローンが残っていた。

 

手術をすることになった時点で

自営業を廃業。

 

抗がん剤治療中は

体調を見ながらのバイト生活。

 

がんがん減っていく貯金。

 

何度、

「家なんて建てるんじゃなかった。」

と後悔したことか。

 

だが、退院後の生活を振り返ってみると、

もはやそれも運命だったのだと思う。

 

家を建てる前の家は

借家で、

ものすご〜〜〜く

古かった。

 

まずはぼっとん便所。

もちろん和式。

 

子供の頃のばあちゃんち以来の

懐かしきぼっとん便所。

 

そして窓枠も木製。

大雨の日には

雨が当然のように入り込み、

雪の日には

家の中に雪がうっすらと積もる。

 

そして洗濯機置き場が

浴室の中。

 

脱衣所ではない。

浴室の中である。

 

下水が繋がっておらず、

洗濯機の排水時には

排水がそのまま浴室の床に流れる。

 

浴室のいろんなところにひび割れがあり、

そこから初めて見るような虫などが侵入を試みる。

 

入浴中の

巨大ムカデは

本当に勘弁してほしい。

 

まぁ、そんな感じで、

とにかく古かった。

 

居間の床は古くなって

ふかふかしていたし、

夏は暑いし

冬は寒い。

 

そんな借家だったが、

私的には満足していた。

 

なぜなら、賃料が激安だったからだ。

 

その額なんと

月1万円!

 

多少古さや汚さへの

ストレスはあったが、

お金には困らなかった。

 

子供の頃

母子家庭で貧乏だったので、

お金がないことへの恐怖の方が

古さや汚さへのストレスより

勝っていた。

 

だが、

一念発起して家を新築。

 

その一年後に病気発覚。

 

当初は自分の決断を恨んだ。

なぜ建て替えなんてしたのだと。

 

しかしいざ

退院してみると、

とても以前の借家では

耐えられないと思った。

 

まず、

お腹を切った後での

和式トイレは辛い。

 

前かがみが怖いのだ。

お腹がどゔぁああと

開きそうで。

それに長時間かがんでいられない。

 

そして寒さ。

私は12月に手術したので、

退院したのはちょうど真冬。

 

抗がん剤治療を受けるためには

風邪をひくわけにはいかない。

 

以前の借家では

家の中でも白い息が出て、

ヒーターをつければ

温度はマイナス。

 

お風呂も追い焚きがないので

ゆっくり入っていると

どんどんお湯が冷めてくる。

 

健康な時には

平気だったかもしれないが、

やはり術後の体には堪えたことだろう。

 

治療をしながらの

ローン返済はかなりきつかったが、

今のこの家だからこそ

抗がん剤治療を

乗り越えられたのかもしれない。

 

だから

「後の祭りだが、

それもまたよし」

である。