健康ってすばらしい

子宮体がんサバイバーの随筆

マニアックな術後の楽しみ

退院してからの密かな私の楽しみを紹介しよう。

共感してくれる人はいるだろうか。

 

それは、浮き出てきた手術の糸を抜くこと!

 

「あ〜あれね!癖になるよね〜!」

なのか、

「・・・は?」

なのか、反応が気になりますが、

説明しよう!

 

私は少々肌が弱く

金属にかぶれることがある。

毎回ではないのだが、

汗をかいたりして金属がこすれると

赤くなって痒くなってしまう。

 

なので、手術のとき

医療用ホチキスではなく

糸で縫ってもらった。

 

主治医の、常に淡々としている淡々先生からは

思いっきり面倒くさがられたが、

術後に痒くなって搔いてしまって

膿んでしまって傷口が開いて

内臓が飛び出てしまうと困るので、

そこはお願いした。

 

抜糸をしなくても

そのまま溶けてしまう糸らしいので、

術後も放置していた。

 

見た目にはあまり気にならないのだが、

手で触ってみると

指先に若干つんつんしたものを感じた。

 

それがどうにもこうにも気になって

引っこ抜きたかったが、

これを引っこ抜いたら

体の中に縫い込まれている糸が

ずるずる〜〜〜っと、

あのドレーンのように

連なって出てくるのではないかと

恐怖で躊躇してしまっていた。

 

だがしかし!

我慢の限界が来た。

 

毛抜きをつかって

慎重に慎重に

糸の先をつかみ、

ゆ〜っくりと抜く。

 

ぷすっ…

 

実際にそんな音がした訳ではないが、

そんな感じで意外とするっと抜けた。

 

快感っ!

 

ずっとつんつん気になっていたものがない!

 

引っこ抜いた先っぽ(体の中に縫い込まれていた方)の糸は

細くなって溶けていた。

 

(ホントに溶けるんだぁ。

 医療の発展よ、ありがとう。)

 

手で触って確認してみる。

 

つるつる!

なんにもつんつんしない!

 

はぁ、すっきり。

 

直径、深さ、共に1ミリもないほどの小さな穴が、

糸を抜いたあとの肌に出来ていた。

 

ところがである。

すっきりしたのもつかの間。

またつんつんし始めた。

 

別の縫ったところから

肌の新陳代謝によってなのか

糸が押し出されてきた。

 

(よしよし、

また抜いてやるぞ。)

 

ぷすっ…

快感!

 

こんな糸とのやり取りが

しばらく続いた。

 

無意識下の中で

日々繰り広げられる

新陳代謝の営みを、

その小さい糸によって感じることが出来た。

 

ほんの小さな変化ではあるが、

それにより

抗がん剤で髪が全部抜けても

きっとまた生えてきてくれるだろうと、

勇気づけられる私であった。

 

余談ではあるが、

当時タイムラプス映像が流行っていて、

髪が抜けて、また生えてくる様を

タイムラプスで残せば面白いかなと思ったものの、

元来の飽き性のため

2週間ほどしか続かなかったのも

今ではいい思い出である。